「Cell and Gene Meeting on the Mesa」に
岡雅子研究員が参加しました
今回のブログは、創薬研究部 岡主幹研究員から、
2023年10月に参加したアメリカのカンファレンスについてレポートしてもらいます。
創薬研究部の研究員の岡雅子です。2023年10月10日から12日まで、アメリカのカリフォルニア州サンディエゴにあるカールスバッドでAlliance for Regenerative Medicineが開催したカンファレンス「Cell and Gene Meeting on the Mesa」に参加しました。
サンディエゴの中心から50kmほど北に位置するカールスバッドのリゾートホテルにおいて開催されたこのカンファレンスには、遺伝子治療や細胞治療業界を最先端で牽引する製薬企業、ベンチャー企業、CRO、CDMO、大学などが数多く参加し、最新の開発の動向や、患者さんへの提供に向けて現在の治療方法をどのように開発、発展させるかなど、それぞれの立場から活発な議論や情報交換がなされました。
講演会場の外のフロアや廊下には、30を超える企業のブースが所狭しと並び、近い距離で気軽に会話ができる情報を得やすい環境が整っており、また、朝食、昼食、夜の軽食(さらに、かっこいいジャズ演奏やドローンでのプロジェクトマッピングなど)も提供され、偶然隣になったさまざまな業種の人々との交流を通じて、新たな関係が広がりました。現地で知り合った方の会社を見学させてもらうなどの貴重な機会にも恵まれ、これまで参加したことのある大きな国際学会とは異なり、人と人との距離が近くアットホームな雰囲気の中でミーティングへの参加を楽しむことができました。
今回のミーティングでは、遺伝子治療に用いられるアデノ随伴ベクター(AAV) や細胞治療で効果を上げているCAR-Tなどの製品化に向けたオートメーションについて多く議論されていました。また、各企業の紹介では、効果の持続性や安全性を実現するためのAAVベクターの改変技術について研究開発を進めている企業が多くあったことが印象的でした。免疫療法で用いられるCAR-T細胞についても、CRISPRを使った遺伝子編集技術での細胞調整法の開発や病院との密な連携、オートメーションで作った細胞治療方法などについて紹介されており「安全で、実際の効果を示すことが可能な治療法」として、最新の技術が身近なものとなる日も近いと感じられました。
非常に重要な議論として記憶に残るのは、遺伝子治療や細胞治療の領域全体が大きく発展するためには、それぞれの会社が独自で保有するプロトコルを業界の中で共有することや、どのような処置がうまくいく、あるいはうまくいかないのかなどの情報を、会社を越えて共有し、一丸となって進まなければいけないと強く主張されていたことです。企業として自社の技術を守ることが優先されがちな状況を変えることが、本当に患者さんのためになる治療法の開発の進歩のために重要であると皆が話していた点に、患者さんを治すことが可能な細胞治療法の開発をめざす者として共感を覚えました。また、当たり前のことではあるのですが、信頼できるチーム作りの重要性についても多く語られており、自身もセルージョンの一員として、信頼できるチーム作りに貢献していきたいと強く感じました。
ところで、カールスバッドで宿泊したホテルの隣には美しい海岸線が長く続いており、潮風がとても心地よい場所でした。町全体は(タクシーの運転手さんの言葉を借りれば)古き良き町で、サンディエゴの中心まで30分くらいでアクセスすることもでき、リラックスするのには最高の場所です。今回知り合いになった方からサンディエゴのおいしいお店を教えてもらったのですが、残念ながら行くことができなかったので、また機会があれば是非訪ねてみたいと思っています。