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ニコン・セル・イノベーション 代表取締役 
取締役社長 中山稔之様×羽藤 晋 対談

2022.08.16
左:CELLUSION 羽藤 晋 右:ニコン・セル・イノベーション 中山 稔之 様

商用化にむけた業務提携について

羽藤 2015年にセルージョンを設立し、研究開発の初期段階ではiPS細胞を用いた角膜の内皮細胞を実験室で作っていました。そして治療効果が見えてきたタイミングで、臨床研究や治験を進め、最終的には商用化していこうという構想を描き始めました。

当初は臨床研究でヒトに投与する細胞を慶應義塾大学病院の細胞培養加工施設(Keio University Hospital Cell Processing Center, KHCPC)で作るつもりでいました。しかし、KHCPCの施設で商用化まで進めるのは難しいため、CDMO(医薬品開発製造受託)と提携し、技術移転をしながら開発していく必要があると判断しました。そこで、ニコン・セル・イノーベーションに声をかけさせていただきました。
比較検討させていただく中でニコン・セル・イノーベーションを選んだのは、提案内容に具体性があったからです。技術レベルも高く、私たちのスケジュールに関する質問への回答内容に信頼を持てたことも評価の高かったポイントです。また、試薬の調整方法や粉じんへの対応など細かい技術的な質問にも明確に答えていただきました。

中山 評価をしてくださり、あらためて身が引き締まる思いです。私たちはGCTP/GMPに適合した生産設備を構築・運用しており、細胞生産、品質保証、品質管理等、最高レベルのサービスを提供しています。また、細胞受託生産市場における受託製造世界最大手のLonza社と戦略的業務提携契約を締結しています。Lonza社は20年以上のプロセス開発や製造の経験を持ち、世界の主要な規制当局との連携実績を持つ企業です。ニコンというとカメラのイメージを持っている方も多いかと思いますが、ニコンの子会社であるニコン・セル・イノーベーションは2015年の設立以来、CDMOとしての経験値を着実に増やしています。そのためセルージョンへのご提案の際にも単にスケジュールを引くのではなく、前後のつながりや行動の意味などを具体的にご提案できました。

羽藤 施設を見学し、広さやどの程度並行して実験や製造ができるのかを確かめました。当時はまだ稼働していない部分がありましたね。

中山 将来に向けて空けておいている拡張スペースもあり、余裕がありました。東京都江東区の新砂事業所はトータル で7500平方メートルを越える広さがあり、細胞医薬品を作る施設としては日本最大級です。設備投資をし、臨床試験だけでなく、商用生産や無菌充填にも対応するように設計しました。

羽藤 比較検討した他の施設と比べて一番広く、導線も明確で安心感がありました。

中山 広さを重視しているのは、臨床試験だけでなく商用化を意識しているからです。商用化を見据えたオペレーションを考えると、一定のスペースが必要です。

触れてくださったように、導線にもこだわっています。人・原材料・消耗品・廃棄物の流れ、さらには製品の流れ・隔離に至る詳細まで検討済です。クリーンルーム内の各種生産設備などは24時間365日、システムにより監視しています。また、生産設備は無停電装置と非常発電機とに接続されており、不意の停電にも対応可能です。

中山 立ち上げから商用化までを見通してハードを設計しているため、セルージョンのパイプラインに応じてカスタマイズしながら設備を拡張していくことが可能です。効率的に製造できるフェーズまで安心してお任せください。

羽藤 将来に向けた拡張余地があり、生産量が上がってきた時にも対応できるのは大きなポイントでした。商用化し、世界中の患者さまに届けるというゴールを共有できているので安心しています。

再生医療の分野において、大学の研究室発のシーズを上市して患者さまに届けるためには製造方法の開発がキーファクターです。私たちが今まで慶應義塾大学やセルージョンの研究室で続けてきた研究開発に伴走していただくために、知見の共有やベーシックなサイエンスの技術移転、情報共有を進めています。

最初の大きなゴールはGMP製造を経て、治験、臨床試験に入ることです。そして大量生産できる体制を構築し、商用化して患者さまに届けます。間にはいくつか大きなハードルがありますが、コミュニケーションを密に取りながら進めたいですね。

中山 再生医療のキーが製造部分にあることは同感です。医薬品として品質を保ちながらスケールアップしていく部分にこそ細かなノウハウが詰まっています。繊細な気配りの積み重ねをいかにシステムとして構築していくのか。羽藤先生の取り組んでいる再生医療には世界中が期待しています。日本発のアンメット・メディカル・ニーズへの挑戦にチームの一員としてご一緒でき、うれしく思います。

羽藤 知財や特許、サイエンスのバックグラウンドのデータも重要ですが、ものづくりという意味では、より繊細なノウハウがライバルとの差になります。それを積み重ねていくことで、品質や生産量の観点で他が真似できない製品を作れるようになると考えています。アメリカやヨーロッパでも今、再生医療が盛んになってきました。セルージョンは日本に留まるのではなく、グローバルな視点で再生医療の製品を開発していきます。そこで求められるのは、全世界の患者さまの需要に応えながら、品質を落とさないことです。日本の再生医療が世界中から求められるために大事な部分です。

中山 私たちの会社は日本の再生医療のインフラになるというビジョンを掲げて立ち上げました。再生医療を支える存在として、セルージョンと密に連携していきます。

羽藤 再生医療や細胞治療の分野は今後、日本の基幹産業になる可能性があります。セルージョンがその1つになれるように、今後も力を貸してください。

この対談は2022年8月に実施しました。掲載内容は対談当時の情報に基づいております。

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